TSMCの営業収入の26%がアップルからの受注

TSMCが競合他社との競争において一番の強みとしているのが、7ナノメートル以降の先端プロセスだ。これらはすべて高単価のラインアップで、競合他社がいなかったり、いたとしてもうまく作れないからだ。競争相手が少なければ価格決定権がTSMCの手に落ちるため、こうした先端プロセスからの営業収入が、TSMCの営業収入全体の半分以上を占めるようになった。

貢献利益については良品率と効率とコスト管理の進捗に左右されるため、収益が爆発的に増加するのは、学習曲線が完成してからになる。

不敗を誇るTSMCの価格戦略の裏には、もう一つの大きな要因があった。米国企業アップルの貢献である。アップルは現在、TSMCの最大の顧客であり、アップルからの受注がTSMCの営業収入の26%を占めている。

アップルはパソコン、スマートフォン、パワーマネジメント、マイクロコントローラなどに使用するすべてのICをTSMCに発注しているだけでなく、アップルと提携している他の(コンパニオンチップの)ICサプライヤーにもTSMCから調達するよう求めている。

TSMCのチップがないとiPhoneを出荷できない

アップルのこの要求は、サプライチェーン管理のなかでも重要な部類にあたる。アップルが1年に出荷できるiPhoneの数は、TSMCがアップルに供給できるスマホ用ベースバンドチップの数と、他のサプライヤーがアップルに提供できるチップの数で決まる。このどれか一つが欠けてもスマートフォンを出荷できなくなる。

Apple iPhone 14 Pro Max
写真=iStock.com/Jozsef Zoltan Varga
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だからアップルは、他のサプライヤーのチップ生産量も管理する必要がある。この管理をしやすくするために、アップルはわざわざチップサプライヤーにTSMC製品を使用させている。そうしなければ生産能力の調節をTSMCと連携して行うことができないからだ。

以上がTSMCのおおまかな価格戦略である。だがこの戦略はTSMCの市場シェアと技術が業界トップになってからのものだ。では、それ以前はどうしていたのかと疑問に思う人もいるだろう。創業初期にはどんな戦略を立てていたのだろうか。